2021年GW 下北半島への旅 二日目
車の中は、とても快適です。
いつも寝ている布団を積み込めば、どこでも移動できる別荘を持っているような感覚。
明るく照らしてくれるライトを買えば、寝る前に読書もできるし、何の不足もありません。この自由さに病みつきになってしまいます。
ゆっくりと睡眠をとり、朝は6時に自然に目覚めました。
いつもは目覚まし時計で無理やり目を覚ましていますが、眠りが満ち足りて自然と目覚めることができることの幸福感を感じます。
トイレをお借りして、車の中で手早く身だしなみを整え、7時に出発します。
道の駅はしかみは、大きな道のそばでほかに車中泊をしている方も多く、それでもとても静かで、また是非訪れたい場所です。静かに眠らせていただき、感謝です。
さて、今日はどこへ行こうか、どんなことをしようか・・・!
八戸に来た理由のひとつは「八食センター」に行ってみたいなぁと純粋な憧れがあったことです。
八戸の美味しいものがひとつに集まったという、「八食センター」。何で知ったのかは忘れてしまいましたが、いろんな活気のあるお店が並んでいて、自分で好きなものを購入していくスタイルで、誰かがここで朝ご飯を食べているのを見たかして、八戸といえば八食センター!というイメージが私の中に強くありました!
でも八食センターがひらくのは10時です。今から行っても早すぎてあいていないし、10時まで開店を待つのは、少し時間がもったいないような気もします。
ぐるぐる考えて、やっぱり見るだけでも見たい!と心を決め、出発しました。
道の駅はしかみから八食センターまでは30分ほどの道のり。朝のきらきらしたまぶしい道を走ります。
どこを見ても初めての道。すべてが新鮮でとても楽しいドライブです。
八食センターは駅からは少し離れた通り沿いにありました。外観だけ見てもしょうがないんだけど・・・いつか七輪村に必ず来て美味しいものを絶対食べる!!八食センターに来る、というのことを、また八戸に来る目的にしよう!と心に決め、今回の旅では諦めることにしました。
さて、次の目的地へ向かいます。
今日は長旅の予定です。なるべく海沿いを走って、目的地である下北半島に突入。まずは「寒立馬」に会いに尻屋崎を目指します。
ひたすらまっすぐ進む海岸沿いの338号線を走ります。海が見えるか、というとあまり見えませんでした。残念!でも見たことのない風景を眺めながら車を走らせるのは、本当に楽しいことです。
下北半島の付け根あたりまで来ると、沼が点在しているようです。今回は時間の関係でゆっくりと沼を眺めることはできませんでしたが、いつかのんびり回ってみたいな、とまた新たな旅の目的をひとつ作ることができました。
やはり東北は大きい。必死で車を走らせてもなかなかに尻屋崎までは遠いものでした。
10時過ぎ、ようやく尻屋崎に到着しました。道路を走らせていると、路上駐車をしている車があります。もしや・・・と思って脇を見ると、いました!寒立馬です。
のんびりと草を食べています。
昔学生の頃、何かの授業で寒立馬の存在を知りました。猛吹雪の中でもたくましく生き抜く寒立馬の存在に感動して、以来ずっと心に残っていました。そんな存在を目の前に見ることができて、感無量です。
穏やかな姿に心を癒され、その場を後にしました。
せっかく尻屋崎に来たので、灯台の周辺を歩いてみることにしました。海のそばなのでかなり風が強く、最果てに来たのだな、と旅情を感じることができました。
最果てのバス停に心が惹かれました。
車はとても便利なのですが、便利すぎて自分の家と移動しているような感じがします。そうなると、やはり旅情が薄まってしまっているような気がして、バスに揺られての旅に心が惹かれます。はるばる路線バスに乗ってこの最果ての地までたどり着いたなら、どれほど感動するだろうか、と考えてしまします。
さて、次の目的地です。次は、これも昔から謎めいた場所として憧れを持っていた「恐山」に向かいます。下北半島は、本当に魅力的な見どころの多い場所です。
恐山までは約1時間の道のりです。途中むつ市を通り抜けました。人家も多く、活気のある場所に感じました。
恐山が近づいてくると、森が深くなっていくような気がしました。そしてその森を抜けると、橋がありました。これがもしや・・・と思い、車を停め降りてみることにします。
あの世とこの世の境だという恐山。その手前にある三途の川にかかる橋でした。今は通行することができないようですが、独特の恐ろしさのようなものを私は感じました。
死んだらこのようなところへ行くのだろうか・・・
普段は考えないようなことが、頭の中に浮かびます。
この橋からすぐのところが、恐山霊場の駐車場でした。とても広い駐車場で、駐車場から湖を見ることができます。これが宇曽利湖です。
天気もあいまって、より寂しげな風景に心も体も寒くなるように感じました。雨が時々降る不安定な天候で、まだ5月初旬の青森、実際かなり寒いです。
なにか温かいものでも食べてほっとしたい・・・
恐山の入り口そばに食堂がありました。
迷わず飛び込みます。
霊山でいただくラーメン。何か有難いもののように感じます。
体を温めて、いざ恐山に入山します。
参道を通り抜け山門をくぐると、この世ではないような荒れ果てたような世界が広がっていました。
想像はしていましたが、この世の果てのような寒々しい風景に言葉を失います。
そこここから蒸気が噴出し、塔や卒塔婆のようなもの、仏像などがぽつりぽつりと立っています。からからとむなしく回り続ける風車も寂しさを誘います。
道ができているので、そこをゆっくりと進みます。
やはりここはあの世の入り口。私たちがいる世界とは違う感覚なのだと感じました。
あの世に迷い込んで行くあてもなく漂うような感覚でふらふらと進みます。行きかう人もみな静かな面持ちです。誰かの名前の書かれた札のようなものもそこここにあります。亡くした大切な人に会いにこの場所に来る人たちも多くいるのでしょう。
道は最後宇曽利湖のほとりまで続いています。
異世界に紛れ込んでしまったかのような心持ちで、来た道を戻ります。
さて、恐山には境内に温泉があるのです。今回は、その温泉に入ることも楽しみにしてきました。
3つほど湯小屋がありました。おそらく古滝の湯に入ってみることに。
中は簡素な脱衣所と浴槽が2つ。硫黄の香りが充満しています。ものすごく成分が濃さそう・・・。
先客は母娘2人組とおひとりで入られている女性。その女性と入れ替わるようにして手前の浴槽に入りました。
熱そうだな!と身構えて入ります。もちろん熱いのですが、思ったほどではありません。何とか体を沈めていることができます。
完全なる硫黄泉。肌にピリピリ来る感じで、効能がありそうです。せっかくはるばる来た憧れの地、熱くて出たくなる気持ちを押さえてゆっくりとします。
もう一つに入っている母娘はおおはしゃぎ・・・自撮り棒で写真を撮ったり泳いだり、大きな声を出したり・・・
はるばる北に来た風情を全身で感じたい・・・まだまだ修行不足の私は意識を持っていかれっぱなしでした。せめて彼女たちより長く入って、その後しみじみと異世界の温泉を感じよう!と熱い湯船に体を沈めていました。
満足して外へ出ると、先ほどまで寒くて凍えそうだったからだもあたたまり、風がとても心地よく感じます。
すっきりと何か重たいものを落として、霊山を後にしました。
今日はこのあと温泉三昧の予定!
次は薬研渓流にたたずむ薬研温泉を目指します。
車を走らせるのは深い森の中です。下北半島にきてびっくりしたことは、車道脇に普通に水芭蕉が咲き乱れていることです。
水芭蕉なんて尾瀬まで行かなければ見られないし、この花を見るために大勢の人たちが集まってくるような人気の花、それがそこここに普通に咲いていることに感動もひとしおです。これを見るために毎年でも下北半島に来たい、とも思いました。
下北半島では、道路すれすれの車道脇には大きなフキが生えていることが多く、ここでの雑草の代名詞のような感じです。関東ではその植生は外来種で占められていて、見ていてもあまり美しく感じません。排気ガスをかぶって汚れて見えます。しかし、下北半島のフキの葉は瑞々しく、その差を見てもここの自然の深さ豊かさを感じます。
薬研渓流はかなり深い山の中にありました。
薬研温泉夫婦かっぱの湯そばの駐車場に車を停め、まずは少し渓流沿いの散策コースを歩いてみることにしました。
今日はあまり時間が無くなってしまったので、散策は短時間、少しだけ歩いておしましです。いそいそと夫婦かっぱの湯に向かいます。
思っていたより秘境感はなく、お客さんもわりといる感じです。
どんな温泉なのだろう・・・とドキドキ女湯の門をくぐります・・・と
素晴らしい風景!!
温泉のすぐ目の前に渓流が流れています。なんという解放感!
関東ではなかなか体験することができない、本当にすぐそばに美しい自然を眺めながら入ることができる温泉です。これはお勧めだし、私自身また何度でも来たい、強く思いました。
目の前に流れる水の流れをただボーっと眺めているだけで、今までの辛かったこと、悲しかったこと、それらが溶け出していくようです。
仕事をするということは、自分の至らなさ、恥ずかしさを味わい続けているようなところもあります。ぬぐいきれないそういう悲しみの感情は、都会で暮らしているうちにひっそりと自分の中に積もって心が疲れ切ってしまうことがひんぱんにあります。
そんな負の感情はフラッシュバックのように定期的に思い出され、心が刃物で切りつけられるような痛みを感じ、そのたびに激しく落ち込んでしまうのです。
しかし、温泉に入っているときは心が穏やかに安定します。
その中でも、手が届きそうなところに広がる美しい風景を見ながら温かい温泉に浸かっていると、憂いが完全に拭い去られて、心が幸福感で満たされていく感覚に包まれます。
そこに!なんとさっきの騒がしい母娘が!!
またも、周りには何も言わずに写真を撮りまくり、騒ぎまくり・・・
・・・
どこへ行こうと憂き世に本当の極楽はないのかもしれません・・・
夫婦かっぱの湯のすぐそばには「かっぱの湯」があります。
残念ながら時刻はもう17時になろうというところ、今は男性の入浴時間のようです。こちらも川沿いすぐにある素敵な温泉らしいので、また今度行ってみたいです。
薬研の自然を大満喫して、次の目的地へ車を走らせます。
次はこれまたツイッターでタイムラインに流れてくる温泉です。
私はツイッターは見る専門で、いろんな方たちの旅行先の素敵な写真などを楽しんでいます。この温泉のことはそれまでまったく知らず、初めて見た時も、なんて読むのか?
すら分からなかったのですが、その懐かしく寂しげな風情にとても心惹かれていました。はるばる下北半島まで来た理由の一つでもあります。
「下風呂温泉」です。したふろおんせん?したぶろ??
「しもふろおんせん」と読むそうです。
ツイッターでは「大湯」「新湯」という共同浴場が風情があってとても良い、とのことだったのですが、つい最近(2020年11月30日)閉館してしまいました。ツイッターでもファンの方たちがお湯に別れを告げるツイートをしているのを目にしていました。
「大湯」「新湯」は翌12月1日に新しくオープンした「海峡の湯」に引き継がれたとのことです。
ずっとツイッターを見ながらどんなところだろう・・・と想像を膨らませていた憧れの温泉です。ドキドキしながら浴場に入ります。
中は地元の方たちでにぎわっています。お年寄りから小さな子供まで、多くの人がお湯を楽しんでいます。やはりここもシャンプーやリンスなどはありません。八戸で購入したアメニティーを使って頭、体を洗ってさっぱり!
いよいよ念願のお湯です!
洗い場があるフロアには「大湯」「新湯」「熱湯」の三つの湯船があります。
どれも熱そう・・・
勇気をもってまず、すいていた新湯に入ります。熱い・・・!でも気持ちいい・・・。
硫黄泉なので硫黄の香りもそうなのですが、それよりも浴槽の青森ヒバの香りがとにかく病みつきになる香りなのです。全身必死でその匂いをかぎます。なんて心地よい香りなのだろう・・・温泉も最高です。熱いけれども最高に気持ちいい。
しかし熱いのであまり長くは入れません。浴槽のふちでゆっくり体のほてりを冷まします。
大湯にもチャレンジ。こちらも素晴らしい香り。新湯より熱いような気もします。
このフロアから出て、もう一つのフロアに行くと「井上靖ゆかりの湯」と水風呂、サウナがありました。「井上靖ゆかりの湯」はぬる湯でしたー!ほっとする休憩スポットです。ぼーっと長湯して、外に見える津軽海峡を眺める至福の時間です。
そして、見つけました!水風呂が体のほてりをすべて冷ましてくれる最高の装置だったのです!!
水風呂に体を沈め、十分に冷やしてから行けば、大湯新湯恐れることはありません。どんどん入れて楽しめます。熱くなったらまた水風呂へ。完全に自律神経が整っていきます。
何度目かに思い立って「熱湯」に挑戦してみました!ああああ熱い!!!!
体に突き刺さるような痛み!もう感じるのは熱さではありません。痛みです。少し入って出ましたが、出る時が一番痛かったです!イタイイタイ!!とまた水風呂へ・・・はぁ~~~・・・極楽・・・
この無限ループは薬物のようで、何度やっても飽きることがありません。浴槽のヒノキの香りもまた薬物です。体いっぱいでその香りを吸い込み、ただただ幸せな気分になるばかりです。
さすがに食堂のラストオーダーの時間も気になり、泣く泣く湯を出ることにします。もっともっと入っていたいけれど・・・
下風呂温泉、必ず必ずまた訪れてこの素晴らしい湯を堪能したい温泉です。出会えてよかった!
さて、温泉を後にしようと出口に向かうと、そこには見覚えのある顔が・・・
なんと!三度目の遭遇です・・・!!
恐山温泉で騒いでいて、薬研温泉でもうるさかった・・・あの母娘がそこにいるではありませんか・・・!
さすがに向こうも私を認めたようで、ふたりひそひそ・・・
私が満足して出る時で本当に良かった!あの二人のマナーの悪さを見てイライラするのも精神衛生上よくないし。
やっぱり温泉好きが巡るところって似てくるのかもしれませんね。
これからお楽しみの夕食です!
海峡の湯には食堂がついていることも調査済みで、楽しみにしていました。時刻は6時50分、まだ間に合います。
私は気弱なので、一人でどんなお店でも入れる感じではないのですが、こういった公共の施設に付属している食堂は私のような一人客でも敷居が低いように感じます。
おいしそうなメニューに目移りしますが、地のものが食べられるかな、と思い、結局地魚定食を注文しました。
周りは家族連れ、年配のお友達どうし、また私のような一人旅に見える人など様々です。持ってきた本を読んだり、周りの人をこっそり観察したりしながら待ちます。
しかし、、、厨房は忙しいのか、なかなか料理は来ません。私の後に来たおじいちゃん二人組も心なしかイライラ・・・私も少し不安になります。
注文から約40分!ようやく地魚定食が運ばれてきました!
待った甲斐もあり、とっても美味しい!!
昨日の夕食はコンビニだったので、久しぶりのちゃんとした定食料理、温かくておいしくて、感動しきりです。ホッケのフライもカリカリしてまったくくさみもなくてなんて美味しいのか!
お刺身も新鮮で大満足の夕食となりました。
さて、次は寝床探しです。
料理を待っている間、近くの道の駅を探したりしていたのですが、ちょうどよい場所にありません。ちょっとした駐車スペースがあって、車中泊もできそう、という情報がありましたが、一人だけで車中泊をするのはやはり不安です。ある程度ほかの人も車中泊しているところで、安心して泊まりたい・・・
しかし、一番近くの道の駅でもここから一時間半くらいかかってしまいます。
色々悩んで、やっぱり人が集まる道の駅に向かうことに決めました。
今日の宿は「道の駅かわうち湖」に決定です。
すっかり暗くなった道を一生懸命走ります。
右側はずっと海岸線で、ふと見る夜空にすごい数の星が!海には光がないので星が鮮やかに見えるようです。止まってゆっくり星を見たい気持ちもありましたが、急いでいるのと少し寒いのでやめました。
車はあるところからどんどん山奥のくねくねした狭くて走りづらい道に入っていきます。まっくらで誰ともすれ違わず、まったく人の気配がありません。不安はどんどんと募っていきます。この決断は間違っていたのだろうか・・・
かわうち湖はとても遠くて、心細さに涙が出そうになります。
誰一人車に出会うこともなく進んだ山奥のまっっっっくらな道の脇に、道の駅はありました。静かなのはいいのですが、静かすぎてかえって怖くなります。
ほかにも数台ですが車中泊とおぼしき車が駐車してあることだけが救いですが、あまりに暗くて静かで、本当に心細く、この日はあまり深く眠ることができませんでした・・・
~かかったお金 約4080円~
恐山ラーメン 700円
恐山入山 500円
薬研温泉夫婦かっぱの湯 230円
下風呂温泉海峡の湯 450円
地魚定食 1500円
コンビニ 700円