車中泊で一宮御坂の桃源郷と満開の高遠夜桜見物
家のそばの桜が咲くと、気持ちが焦ります。
桜が散る前に、できるだけたくさんの桜を見なくては・・・
この週末は、満開だと聞いた長野の高遠の桜を見に行こうと決めて、荷物をまとめ寝具を車に積み込んで家を発ちました。
中央道に乗ったところで、長野に行くには途中山梨を通ることに気づきました。
昔父が、桃の時期の山梨の一宮御坂は、町全体が一面ピンク色に染まりそれは綺麗だ、と言っていたことを思い出し、立ち寄ってみることにしました。
思い付いてすぐに実現することができるところが一人旅の利点です。
一宮御坂ICの手前、釈迦堂PAに車を停め階段を上ります。
登りきったところにはピンク色に染まる桃の畑がありました。
見晴らしもよく、一宮御坂の桃色に染まる町が広がっていて素晴らしい解放感です。
しばらく桃の花を楽しんだら車に戻り、高速を降りて町を走ります。
町はピンク色で溢れていて、本当に華やかです。この時期に来られてよかった!
中でも県道137号線を走っていた時に、偶然見つけた桃の花と菜の花が咲きほこる場所が圧巻の美しさでした。
しばらく夢の中にいるようなぼーっとした幸福感の中、一面の桃色、鮮やかな黄色に取り込まれたようにさ迷い歩きます。
美しい景色を眺めているときは、一時ながら悩みや不安から解放される気持ちがします。
必ずこの時期に再訪したい、心に残る景色でした。
山梨には素晴らしい温泉がたくさんあります。まだ行ったことのない温泉もたくさんあります。ツイッターで知った「国母温泉」に立ち寄ってみることにしました。
国母温泉、びっくりするほど素晴らしい温泉でした!
お風呂はかなり広めで、観葉植物が飾られており明るい雰囲気です。
お湯はぬる湯とあつ湯があり、露天風呂もありました。その露天風呂の手前にもお湯が。
温泉は地元の方たちでにぎわっていて、世間話に花が咲いています。
お風呂に響くほわんとした話し声、湯気の良いにおい、お湯の温かさにも包まれて完全にリラックスします・・・
出た後も肌がすべすべして、体もぽかぽかと温かさが続く素晴らしい泉質で、ぜひまた再訪したい温泉となりました。
温泉を出た後は、いよいよ桜の名所「高遠城址公園」を目指して車を走らせます。
節約のために下道で行きますが、それでも2時間ぐらいで着けそうです。
高遠は、地名に「遠」の文字が入っていることもあり、私の中でとても遠い秘境のイメージがありますが、山梨からはわりと近いようです。
途中、「やよい軒」でランチ休憩、サバの塩焼きを食べました。チェーン店は一人旅でも利用しやすく気軽に入れるので、臆病な私には力強い味方です。
山梨学園大学が近いようで、学生が話す恋愛話などを聞くともなしに聞きながら、美味しいご飯を楽しみました。
高遠へは国道20号線をひたすら西に進むのですが、この道が本当に素敵でした。
釜無川が左側に流れ、雪を抱く南アルプスを見ながら走るこの道は、本当にのどかな道で、甲州街道の名残の蔦木宿や台ヶ原宿など、魅力的な古い町並みが残っています。今度はのんびり古い宿場町を歩いて、情緒を感じてみたいと思います。一人旅の寂しさに似合う情緒があります。中央線も並走しているので、電車でこれらの町を巡りながら旅をするのも楽しそうです。
一つ旅をすると、いろんなやってみたいことが広がっていきます。
高遠に行くには、茅野の町から国道20号線を離れ、かなりの山道を進みます。「杖突峠」と名付けられた峠を越し、どんどん高度を上げていきます。昔の人は難儀しただろうし、今でも高遠の町はやはり遠い町だ、と感じました。
山道を通り抜けると里が見えてきました。そこはまさに桃源郷のようです。そこここに桜の花が咲き誇っています。今が盛り、ちょうど満開のタイミングで来ることができたようです。
どこを見ても美しい桜、桜、桜・・・ここの桜は「高遠小彼岸桜」というそうなのですが、ぽってりとふくよかで、福々しいイメージです。染井吉野がスマートな印象なら、もう少しふっくらして、たわわに花がついている、そんな印象を受けました。
町を走っているだけでも桜の多さに大感動の連続です。
城址公園が近づくと、車の数も増えてきました。駐車場はいろいろなところにあるようですが、車で来るの初めてなのでどこに停めたらよいのか・・・迷いながらも城址公園に近づいていきます。
どうやら、あまり意図はしていなかったのですが、城址公園そばの駐車場に停めたい車の列に紛れ込んだようです。かなり渋滞しているので、「少し離れた下の駐車場に停めて上まで歩いてもよかったな・・・途中桜も見られるし。」など少し後悔もしましたが、20分くらい待っていたら、城址公園そばの駐車場に停めることができました。
時刻は18時。遅い時間だったので停められたのかもしれません。
駐車料金は1000円。
期待にドキドキしながら、カメラを片手に車を降り、公園に歩いていきます。
入り口にはたくさんの人・・・検温をして、連絡先を記入して、連絡先と交換で入場チケットを購入します。(500円)
もう入る前から圧倒されるほどの量の桜に、感動ひとしおです。
その美しさにうっとりとするのですが、そこは「天下第一の桜」の名所です。
土曜日の夜ということもあり、どこへ行っても桜を楽しむ人がたくさんいます。静かに一人桜を楽しむ・・・という風情はなく、少し人ごみに疲れても来たので、1時間ほど、桜を堪能したのち公園を後にしました。
さて、今夜は車中泊をするのですがその前に温泉に入って一日の疲れを洗い流そうと、温泉に向かいます。
向かったのは「信州高遠温泉さくらの湯」です。城址公園から車ですぐのところにあります。まさに桜満開の今日は混んでるだろうな・・・と思って向かいましたが、時間も遅かったこともあり、のんびりと温泉を楽しむことができました。
昭和を思い出すようなレトロな浴場で、その雰囲気にも癒されます。お湯も熱すぎず、浸かっていると今までの疲れがお湯に溶け出していくようです。
この温泉は20時に閉まってしまうので、急いで支度して上がります。
さて、今日の車中泊場所です。高遠へ来る途中で通り抜けてきた道の駅の中で、「道の駅蔦木宿」は静かそうだし、温泉もついているのでほかに車中泊をしている人が多そうだな、と目星をつけていました。今日はここに一晩お世話になろうと車を走らせます。
途中茅野のセブンイレブンで夕食休憩。最近のコンビニはちょっとしたお惣菜も体に気を遣っているものも多く、しかも美味しいものが増えているような気がしています。日常生活では自炊をしているので、あまりコンビニのご飯を食べないこともあり、コンビニで好きなものを買って食べられる、というのも旅の大きな喜びの一つです。
1時間ほど走ってようやく蔦木宿に到着。時刻は22時です。
本当は本を読んだりまったりしたり、車の秘密基地感を楽しみたかった気持ちもありましたが、一日動き回った心地よい疲れもあり、ゆっくりと眠ることにします。
道の駅蔦木宿は一晩中とても静かで、車中泊をしている方々も多く、安心して休むことができました。
朝は自然と目覚めるまで寝ていました。起きると6時です。身だしなみを整えながら今日はどうしようか、考えを巡らせます・・・何も予定は決まっていません。
天気が良ければどこかハイキングをしたいのですが、あいにく今日は雨模様です。
ふと思い立って「大菩薩峠」の登山口そばの上日川ダムまで行ってみることにしました。
国道20号線の風景の美しさは相変わらずで、南アルプスの急峻な山々を右に眺められる幸せを嚙み締めながら走ります。
上日川までの道ものどかで本当に素敵です。途中通る「やまと天目山温泉」には昔行ったことがあり、その泉質の良さに感動し、また行きたいとかねてから思っていました。
天目山温泉を少し過ぎたあたりのところで、道は冬季通行止めになってしまっていました。大菩薩峠もまだ山開きはしていないようです。
道を戻ります。まだ時間が早くて天目山温泉も営業前です。さてどうしたものか・・・今日は天気も悪いし、やはりどこか温泉に入ろう、と思い、これもツイッターで知った「はやぶさ温泉」を目指すことにします。
途中「ハーブ庭園旅日記」のチューリップの宣伝に心惹かれて寄り道。足湯もあって綺麗でのんびりできる場所でした。ショップも充実していて、ついラベンダーのアロマスプレーを購入しました。これで普段から深く眠れるようになるとよいのだけれど・・・
塩山や石和の町を通り抜けるのですが、昔友人たちとこの辺を歩いて旅行した楽しい思い出がよみがえり、温かな気持ちでドライブができました。
「はやぶさ温泉」に到着。かなりのんびりしたところにぽつんとある温泉でした。
のんびりしていていいなぁ・・・
さっそく浴場にはいります。
明るく日が差し込む浴場内は広々と開放感があり、上を向いた大きな鯉の口の湯口から、ドバドバと吹き出すようにすごい量の温泉があふれ出しています。
脱衣場に、「温泉はすべて源泉のため、どの湯口からも飲むことができます」と書いてあったので、さっそくすくって飲んでみます。わずかに塩味、硫黄の香りを感じました。とても飲みやすく、飲んだ後胃腸の動きがよくなり、空腹感を感じました。
露天風呂も広く、ぼーっと時が通り過ぎるのを感じながら過ごすあたたかな時間です。
1時間ほど湯を楽しんで温泉を後にしました。
こんなに良質な温泉があふれ出している場所が、首都圏から近い場所にあって、来たくなったらいつでも来ることができる、というのは本当に幸せなことだなぁ。
次は何をしようか・・・今日は歩くのはあきらめてドライブを楽しもうか。
では、雁坂トンネルを通って埼玉に戻っていくのはどうだろう、と思いつきました。山深く、標高の高い道を行くのはとても楽しそうです。西沢渓谷のそばを通り抜けていくのも心惹かれます。
雁坂トンネルへ向かう道は、思った通りのものすごく山深い道で、標高もどんどん上がっていきます。気温も下がり、おりからの曇り空も相まって少し寂しい風情です。
途中道の駅三富でひとやすみ。甲武信岳を見ながらぼーっと過ごしました。いつか石楠花咲き乱れる甲武信岳を上ってみたいな・・・などと夢想するのも楽しいひと時です。
途中行く道の脇の森の足元にも、青々しい緑がちらほら見えます。春が来てようやく葉を出したのか、新鮮で瑞々しい感じです。ハシリドコロかな?などと思いながら走り抜けていきます。
料金所で740円を支払い、トンネルに突入。長いトンネルです。
抜けるとそこは地元埼玉、しかしやはり山深く、右には沢が流れている風光明媚な場所です。
ちょっとしたスペースに車を止め、置いてある地図を見ます。
すると、「栃本」を通り抜けていく道があることを発見!
栃本!
今から20年ほど前、田部重治の「山と渓谷」をむさぼるように読み、その世界に夢中になりました。様々なことが現在とは大きく違い、自然も考えられないほどに豊かだった時代、奥秩父の山々を友人の小暮理太郎と歩きまわる田部重治の姿に憧れ、そこで「栃本」の存在を知りました。山登りで疲れ切った体を引きずって歩いてきた田部と木暮が「栃本」の里を目視し、ほっと安堵する様子を読むと、その風景に私自身も同時に安心感を感じました。私の中で「栃本」は地上の楽園のようなイメージの場所となり、そのころ、何度も足しげく通った思い入れのある場所です。
それから20年ほどが過ぎ、そのころから長らく栃本を訪れていません。ふわっと当時のことが思い出され、胸が詰まるような感じです。
20年前といえば、ちょうど大学を出て就職をしたころ。初めての仕事に何もかもがうまくいかず、毎日生きている意味さえ分からなくなり、あまりに黒くて寒いこころの空洞に、「ああ、「絶望」というのはこういうことなんだ、」と他人事のように感じた瞬間のことは、今でもよく覚えています。
そんなとき、傷ついた心を癒しに来るかのように、時にはバスで、時には車で、何度も何度も栃本に足を運んで、その静かで傾いたような農村の風景を見ては、涙を流してこういうのどかなところで、穏やかに人生を過ごしたいなどと、どうにもならないことを思ったりしました。
今ではもうすっかり忘れていた「栃本」の里、そこがすぐそばにある!
これは本当に必ず行こう、と決め、車に乗り込みました。
約20年ぶりの再訪に胸がどきどきします。栃本はどうなっているのだろう、あのときすでに静かでご老人しか見かけなかった里だけれど、今でも穏やかに存在しているのだろうか・・・と思いを巡らせます。
車を進めると、あの深い谷に落ち込んでいくような、斜面に張り付くように、周囲を山に囲まれて、のんびり存在している、懐かしい山里が見えてきました。
栃本!まったく変わっていません。20年前と、まったく一緒に見えます。
ゆっくりと里を通り抜ける一本道を車で抜け、はずれにあるスペースに車を駐車します。
懐かしい風景に、涙がこぼれます。
ぱっとみたところ、当時とあまり変わっていないようでしたが、あの時に見た、民宿がたくさん宣伝されている看板がなくなっていました。当時営業していた民宿も閉業しているところが多いのかもしれません。スマホで見てみても、民宿が出てきません。
さらに過疎化が進んでいるのでしょうか。
ただ、当時には見かけなかった観光客が、ちらほら関所の中心で歩いているのを見かけました。ネットで「天空の集落」と呼ばれ、youtubeにも動画が掲載されていることを後で知りました。
いつまでもそこにただあってほしいな・・・と、勝手な思いですが願ってしまう集落であり、ずっと私の心の故郷です。また、人生に悩んだらここにこようと心に思います。
あとは、山道を下りながらいくつかの集落を通り抜けて、秩父の町中へ出ます。
交通費を節約して下道を延々と埼玉の町へむけて、あとはただ走っていきます。
一泊二日の春の車中泊旅。
美しい風景をたくさん見ることができた旅でした。
~かかったお金 約16000円~
ガソリン代 約5000円
高速代 4050円
さくらの湯 500円
コンビニ 3300円
高遠駐車場と入園料 1500円
国母温泉 430円
ラベンダーミスト 1300円